お金は血液、血液はお金?
交換、価値尺度、貯蓄の3つの役割があるなどと言われるように、お金は今日の社会を成立させる上で重要な役を演じてきました。しかし、おおよそあらゆるものには悪い面が良い面と同じくらい多くあるというように、お金だけで解決できない経済の問題があるというのも事実です。
経済の問題を解決するのは政治だったり、法律だったり、教育だったり様々なところに要因があるとは思うのですが、今回はとりわけお金という仕組みについてまとめてみます。
お金の役割
昔は貝がお金だったとか、お米が変わりだったとか言うようにお金は紙でできていようが金でできていようが基本的には同じ働きができます。お金というのはそれそのものに価値があるわけではなく、ものを交換する際の仲介役だからです。
このものの交換を広く、自由に、効率よく行うというのが根本的な役割なわけですが、その機能を果たすために満たすべき性質があります。それが、普遍的であるということ、手軽であるということ、安定であるということです。
異なるものを交換するためには、異なる場所でお金が使えなくてはならないつまり普及している必要があります。そうしてどこでも使えるということが、目的に縛られない広さをお金に与えます。
お金を使って交換しようと思うためにはお金による交換が、交換せずにものを得るよりも楽でなくてはなりません。これによってより効率的な社会を実現できます。交換するときのレートを容易に設定できるためには
需要と供給は必ずしも同時刻に成立するわけではないので、その時間的なギャップを埋めるためにお金は維持、貯蓄でき、持っているお金が交換できるという信用がなければなりません。それによって、お金をためていればモノを売るタイミングに限らず交換を申し入れる自由ができます。お金としての価値がある程度安定し、信頼を得ている必要があります。法律などによるルールの共有、偽造されないシステム(技術や契約の方法)など。
言い直すと、交換は異なるモノの間で起こるので、異なる場所で使える普遍性がいり、交換が生産よりコストがかかると交換が起こらないので、手軽でなければならない。安定性がそのお金を使う理由に成るということです。
手軽さは交換が起こる前提で、普遍性は交換の範囲を決め、安定性は交換の媒体に求められる条件です。
お金の性質
焦点の対象
お金は基本的に過去に焦点を当てたシステムです。過去にどうやってお金を得たかについて必ずしも感知しませんが、過去に何かをしてお金を得たはずだから、それに報いる権利があるという、擬返報性があるからです。ここで、「擬」をつけたのは、必ずしも価値ある行動でお金を得るとは限らないからです。もっとも価値とは何かというと難しい問題ですが…。
一方、モノ(消費社会に置いて消費できる対象)は概ね需要と供給の関係で価値が決定されます。これはつまり現在の状況に依拠しています。
過去、現在とくれば、当然未来に対応するものもあって欲しいところですが、それに値するシステムはあまり整備されてるとは思えません。株式市場のような、投資を行う場やpatreonのようなのがかすかに未来を反映しているのかなと言う気がします。ボランティアのようなものに関しては、やりがいと社会的な名誉というのが現状だと思いますが、貢献度を反映するシステムもあると良いのではという気もしますね。
お金がお金を生み出す
お金はお金を生み出します。つまり投資や資本家として活動することで労働ではなく資本によって利益を得ることができます。交換可能性という役割が機会を生み出すからです。資本家としての審美眼やお金を動かすことそのものが労働だ、という主張もありますが、お金がなければできないと言う時点でやはりこれはお金のおかげと言えると思います。もちろん、これはお金に限ったものではなく、一般に武器を持っていればそれによって更に軍備を拡大する可能性は高まりますし、技術者としてのスキルはスキルアップの機会につながり、教養はまた教養をえる方法を教えてくれるでしょう。ただお金がそれらと異なる点は、基本的に上限がないということだと思います。
バブルのような現象も、土地がお金としての役割を得てしまうことで本来の価値とは別の価値が形成されてしまうんですよね。
競り
競争原理がある。お金は社会にとっての血液だと例えられることが多いですが、市場という競う場があることは血液とはまた違うところなのかなと思います。
血液は個人の中に巡るものであって、多細胞生物という協同体を保つためのシステムですので基本的に同じ個体の中で血液を奪い合うというようなことはないと思います。いっぽうのお金はというと、同種の生物とはいえ競同体のなかのシステムです。
こういう意味で、お金は武力や法律といった勢力争いの道具としての側面もあるわけです。
配分
ですが、お金が生み出されたおかげで、人類は人との繋がりを深めたわけでもあります。見知らぬ人間との協力を生み出した点です。お金を持っているということが信用につながるわけで、局所的な繋がりに置いてお金が協力を促しています。ただ、全体的な繋がりに置いてお金が自発的に協力を産むことはないので、ここは政治や新しいシステムの構築を模索しなければならないところです。
例えば税というのは再分配としての機能も持っているわけですが、税が課される一つの意味付けとしては、何かを占有する際にその代価として支払うべきものと考えられます。人が土地だったり、財産を一人で所有するということはつまり他の人がそれを利用する機会を奪っているわけです。奪っているのだから代価を支払うべきというわけです。罰金や寄付というのも同じように貢献度、非貢献度という観点から生まれる観念かと思います。
この貢献度、反貢献度というのはいかんせん定量しづらいものですので、そこを反映できるものがあると良いのかなあと思ったりしていますが…。
価値とは
人道的な価値、需要と供給による価値、幸福度色々ある気がしますが、比較するという行為から価値は産まれてる気がします。この比較するための定規は様々にあり、そして様々にあることが意味のあることだとは思います。
比較した結果なんらかの行動を産むというのが価値だと思います。
需要と供給の比較から交換という行動を引出すのがお金。心への響き具合の比較から拡散という行動を生み出すのがSNS。倫理と現実の比較から支援という行動を引出すのがボランティア。
ほんとに色々な価値が作り出されてるなあと思います。自分も価値を生み出せる人間になりたいものです…。

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